けさ、僕の知らぬ間に伊丹さんがいらっしゃいました
北伊丹の駅から夜のうちにいらしたと
北伊丹の駅は飛行機の通り道だそうで、ややもすると
電車の音も聴こえぬほどとか
そう仰りながらにこやかに微笑む伊丹さんの足音は
誰にも聴こえぬほど静か、というよりもむしろ無音です
僕と伊丹さんとのつき合いはわりあいに長く
もう10年ちかくになりましょうか
いらっしゃるときにはいつも急に、しかも起き抜けに
いらっしゃいますから、そのたびに驚いたものですが
けさはそうでもありませんでした
(あ、伊丹さんいらっしゃいましたなぁ)
きょうから数日ほど逗留されることとおもいますが
僕はとりたててもてなすようなことをしません
まして(幸運なことに)仕事を抱えておりますから
伊丹さんのことなど忘れたつもりで勤しむだけです
伊丹さんはとても雄弁なのと当時に非常に寡黙です
ほとんどお話しになりません
ですが雄弁ですし饒舌ですし話し上手です
しかし今回ばかりは伊丹さんのお話しの意味が分かりません
ご忠告には他の何よりもたいせつに耳を傾けているつもりでしたから
それでもなお僕に何かを仰りたいということですから
僕にも相当の覚悟を決めなくてはならぬことでしょう
しかしこんどばかりはノーヒント
浅井慎平でも分かるまい
と、土居まさるが言っていたとかいないとか